車上生活で本を書く 青井硝子のケイトライフ

軽トラック上に家をDIYして車上生活する方法や、住所不定のままお金を稼ぐ方法、小説家になる方法などを記録していきます。普段は川原でBライフ的田舎暮らしをしたり、都会の駐車場にモバイルハウスで生活してます。ノマド生活や肩肘張らない起業に興味ある方はぜひ。

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共感の範囲とその個人差について

プロットをくるくる動かしているとき、「この子は今どういう風に考えているのかな」と精密に追うことを癖にしている。
というのは、プロット作り初心者の頃に師匠や兄弟子に「主人公の心理描写があまり書きこまれてない」といつも指摘をされていたから。それ以来の癖だ。
今では完全にトレースできるようになったという自信もある。

しかし実際に書き上げて投稿サイトなどにアップすると、「全然まったく一ミリも共感できない」という感想が時折見られる。
逆に、「すごくよくわかりますこの主人公の心情」という意見もしばしば寄せられる。
そういえば、「ねーよwww」という砕けた表現のもよく見かける。
これは何だろう。


今まで原稿用紙で1600枚くらいは書いたので、今まで自分自身も知らなかった頻出モチーフ、よくやるオチの付け方、主人公の傾向、などが大分見えてきたように思う。
その中で最も特徴的なのが、「主人公が他者に共感する時、その範囲を自主的にコントロールできる」というものだ。これは特に成熟した主人公に多い。今書いている非常食シリーズなんかまさにそれだ。
そして、読者の違和感はまさにここからきているらしい。


大学時代、共産主義の人がいた。しかも中核派の生き残りだ。
その人は、自前のスピーカーを使ってたった一人で街頭演説を行っていた。法政大学で決起集会を行うだとか、全世界同時革命とか、かなり奇異な大風呂敷を広げていたので、面白いと思って彼と話し込んでみた。彼のアパートにお邪魔し、14時間、二日にまたがって討論を行った。

結局主張は平行線のままだったが、得られるものが多い体験だった。その得られたものの一つとして、共感の範囲、というものが明確になったことが挙げられる。
彼の主張を要約すると、労働者の立場が弱いから資本家を打倒して労働者中心の社会を築こう、というものだった。そのために労働者決起集会があれば東西を問わず参加していた。彼の魂の根元には深い共感性があり、知り合いでもない「虐げられる労働者」というイコンに対して涙を流すこともあるほどだった。二つに割られるリンゴにすら共感を抱きかねないほどだった。

にもかかわらず、彼の理想に近しいと思しきチベットには何の関心も払わない。
「チベットが民族浄化されてる!全世界同時革命を標榜するなら何か行動を起こさないのか」と質問したら、そのニュース内容すらよく覚えていない有様だった。

これほど共感の範囲が広い人にも関わらず、海を越えた国には何も共感していなかったのが衝撃的だったことを覚えている。


これとは逆に、共感の範囲がめちゃくちゃ狭い人もいた。
焼き肉店を経営している在日ヤクザで、面の皮が物理的にも厚く、常に従業員を虐げていた。
彼によれば、「自分が守る範囲はめちゃくちゃ狭く、親兄弟、いやもしかしたら親は入らないかもしれない。それと特定の従業員。片手の指で数えられるだけ。それ以外はどうなろうと、たとえ生き地獄に落ちようが別に構わない」と言い切った。


共感の範囲は人ごとに違っている。本当に大きく違っている。
しかし、よくよく考えてみればそれはその人個人が持つ生来のもので、おそらくコロコロ変わるようなものじゃないのかもしれない。
そして、これが一番重要なのだけれど、「共感の範囲を意識して変えることができる」という人にはまだ出会ったことがない。
しかしながら自分にとってこれはとても自然なことで、冒頭で記した主人公の性格にもこれがしばしば浮き出てくる。目的のために必要であれば共感するし、必要なければ共感しない。それが共感の範囲が広い人にとってはまるで未知のことに見え、「全く共感できない」に繋がっているのではないだろうか、と考えている。
師匠の言を借りると「一般感覚が足りていない」ということらしいが、まさにそれなのだろう。

数を書くことは非常に大切だと身にしみた。なぜなら繰り返されるモチーフや傾向を把握し、それを一般的な感覚に(必要であれば)修正する作業がプロ作家になるために必須だからだ。それをサボればまぐれ当たりをしたとしても次作にはつながらない。それは不思議と確信が持てる。


しかしなぁ……。
そうはいっても共感の範囲を広めに固定すればありもしない理想に焦げ付くだろうに。
狭く固定したら人非人じゃないか。
みんなその辺どうやって現実と擦り合わせているんだろうか。
もうちょっと放浪して人生経験積む必要があるのだろうか。

まだまだ先は長い。


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