車上生活で本を書く 青井硝子のケイトライフ

軽トラック上に家をDIYして車上生活する方法や、住所不定のままお金を稼ぐ方法、小説家になる方法などを記録していきます。普段は川原でBライフ的田舎暮らしをしたり、都会の駐車場にモバイルハウスで生活してます。ノマド生活や肩肘張らない起業に興味ある方はぜひ。

小淵沢の露天風呂でおじさんに話しかけられた。その3

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その後も次から次へと宝物を見せてくれて、私は時間を忘れて魅入った。
本物の曲刀(シミター)を見せてもらったのだけれども、年代を重ねて黒ずんだ金属が静かな存在感を放っていた。


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よく漫画やアニメなんかで描かれているような軽いものとは違う。
腰に差して人を殺め、その行為に儀礼的な意味合いを持たせて本当にそれが信仰された時代の名残。今それが手元にある。

身震いした。


「刀剣類が好きなのか」

おじいさんの問いに、はい、と答えた。

「好きです。……飼っていた猫に小松五郎義兼とか名付けてしまうくらい」

「国定忠治の伝説上の名刀だな、それは面白い。付けられた猫も迷惑してたんじゃないか?」

そう言って笑ってくれた。


「だったらこんなのはどうだ」


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ことり、と、目の前に刃物が置かれた。

「実際に戦場で使われた槍だ。本当かどうかは知らないが」

手に持ってみる。重たい。
包丁やナイフなどと違って刺突に特化したそれは、いやに尖った金属の塊といった印象を受けた。
厚みが違うのだ。

「さすがに柄は切ったがね。6尺も部屋に置いておけないから。物干し竿にされていたというのもあながち笑い話じゃないかもな」


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次から次へと見せてくれる装飾品、壺、刀剣の類。
彼の部屋は世界が凝縮されていた。


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しかし、夜中の0時を回ったくらいから、微妙に品物の方向がずれてきた。

「このマッチ、面白いんだ。見てて」

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おじいさんはおもむろに目の前のマッチ箱をスライドさせる。

すると、男女の絡み合う細工が出てきた。

「素晴らしいだろう。幕府御禁制の品だ。当時の人々はこんな風にして性欲を満たしていたんだね。ハマグリ軟膏の空ケースを使ったものもあるらしいんだが、まだ手に入らない」

たしかに素晴らしい細工ではあったので、すごいですねと褒めた。
写真は到底ここには載せられない。


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このやたら躍動感ある爺の仮面と、やたら満面の笑みを浮かべた能面も、その類だった。

「これをひっくり返すとな、ほらあ」

男女がまぐわっていた。
まじか。
もちろん写真はお見せできない。


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「この本も読んで感想を聞かせてほしい。ここ、このページ」

勧められるがままに読む。


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当時のエロ小説と学術的見解と筆者の考えが入り混じったカオスが書かれてあった。
陰間茶屋、ってこれ、松尾芭蕉の時代の男娼の話じゃなかったか。わお。


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達筆で書かれた巻物も手渡される。口にくわえて印を組んだらカエルにでも化けれそうなほどの年代物だ。
中身はもちろん、


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48手。
日本版カーマスートラ。
やばい。話がだんだん深夜テンションになってきた。
しかもちょっと男娼分多め。


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「これが家宝。いちばんのお宝だよ。見てくれこの色づかい。こんな良品で保存されているものなんざ世界に二つとないんだ。この時代は男と男が寝るのも普通のことだったんだよ」

そう語る彼の目はきらっきらしていた。
同時に、何か別のことについても期待されているような目をしていた。

ちょっとまずい。
いやだいぶまずい。
この流れはもしかして、もしかすると。


「ところで、最近友人からこんなものを借りてね。 どうだい、興味、あるかい?」



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ホモ。


「どうだい、興味、あるかい?」

重ねて尋ねられる。
頭が真っ白になる。

小淵沢の温泉は、
ハッテンバだった。


「ん?」


おじさんは期待に満ち満ちた目でこちらを見ている。
いけない、ケツが狙われている。
ハングリースパイダーだこの人。
ノンケなのにホイホイついてきてしまった。
私はなんてバカだったんだ。おじさんごめんなさい。
自分がホイホイ付いていかなければ今晩のお供は誰か別の人で発散できただろうのに、
ごめんなさい、自分ノンケなんです。あと言わせてもらえばケツに穴が二つ三つあって突っ込まれると裂けちゃうんです痔ろうなんです勘弁してください。

じゃなくて、なんとかしてここから脱出せねば。


そのとき、天啓閃く。


(そうだ、ここは自分の方が「し慣れている」と錯覚させて、円満に断ろう)

もうそれしかないと思った。追い詰められていた。

渡されたBLコミックをパラパラとめくる。


「ふうん。ごく初心者向けの本ですね。ふんふん」

「そ、そうなんだ。借りたものでね。うん」

ぱたりと閉じて、本を返す。

「南部鉄器の箸風鈴、もう一回見せてもらっていいですか?」

「お? おう、何回でも鳴らしていってくれ」

「本当にいい音しますよね。自分ももう一度東北に行く機会があったら自分用のを手に入れますよ」

「売ってるかどうかは分からないけどね。自分の家が見つかったら、ドアチャイムにするといい」

「ええ、そうします。すみません長い間お邪魔してしまって。そろそろお暇しますね」

「ああ、残念だが。そうだ、これお土産袋。連絡先を書いておいたから、いつでもまた尋ねてくれ。その時はトイレと風呂をもっと清潔にしておくから。私も体を洗っておくよ」

「ええ、お願いします。期待していますよ。それじゃあまた」


……良かった。
作戦が成功したのか、それとも全てを悟って赦してくれたのか、それは最後まで分からずじまいだったけれども、とにかくケツ穴の処女は守られた。

お土産にもらったブルーベリージャムは、お焦げの味がしたけれども美味しかったです。
おじいさん、ありがとうございました。


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